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3 weeks ago @Edit 3 weeks ago
三宅健が心奪われた、エスパス ルイ・ヴィトン大阪「アイザック・ジュリアン」展の映像詩
イギリス人アーティスト アイザック・ジュリアンによる個展が、9月22日(日)までエスパス ルイ・ヴィトン大阪にて開催されている。アートに精通し、自宅には愛する芸術家たちの作品を飾るアートコレクターとしての顔も持つ三宅健さんが、アイザック・ジュリアンのコメントと共に、日本初公開となる《Ten Thousand Waves》の魅力をナビゲート。
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3 weeks ago @Edit 3 weeks ago
グローバルな移動や労働。今もなお通じる問題をアートで表現
ビデオを社会活動の表現手段として用いるイギリス人映像作家たちによるムーブメントを牽引するひとりとして制作活動をはじめたアイザック・ジュリアンは、映像作品を通じて常に現代的な問題に取り組んできた。2010年、第17回シドニー・ビエンナーレにて発表された映像インスタレーション作品《Ten Thousand Waves》は、2004年にイギリス北部・モーカム湾で違法就労の中国人労働者23人が貝を採集しているときに潮流に巻き込まれ、命を落とした遭難事故を題材としている。
「この作品をつくったのは14年ぐらい前になるのですが、ここで扱っている人々のグローバルな移動というのは、今も変わらず大きな政治的な問題だと思います。この事案を寓話(アレゴリー)で表現しました。それは私の視点ではなく、中国・福建省では漁業に携わる人々が信仰する女神“媽祖(まそ)”の視点を通して。中国では媽祖という守護神が、死の国から死者を連れて帰ってくるという言い伝えがあり、遭難事故で亡くなった方々へ敬意を捧げる作品にしました」(アイザック・ジュリアン)
ジュリアンが6年間にわたって行なったリサーチや対話を経て、彼の想いに賛同した張曼玉(マギー・チャン)や趙濤(チャオ・タオ)など著名な俳優をキャストに迎え、アーティストの楊福東(ヤン・フードン)、書道の巨匠である鞏法根(ゴン・ファーゲン)など中華圏の主要な芸術家たちとのコラボレーションを通してこの作品は制作された。
見る者がたゆたう海の中に流されて、巻き込まれていく
《Ten Thousand Waves》のインスタレーションに一歩足を踏み入れると、そこに流れる時間や自分がどこにいるかわからなくなるような……まるで迷路に迷い込んだかのような気持ちを覚える。クライン・ブルーに彩られた空間には9つの大きなスクリーンが配置され、観客は異なる映像が映し出されるスクリーンの間を自由に歩き回り、移動しながら約50分の作品を鑑賞する。
「空間自体のしつらえとしては、青という色にもテーマ性があります。青は海の色。これは中国人労働者の方たちが亡くなってしまった海を示唆しますし、イヴ・クラインの青という連想もあるかもしれません。スクリーンを9つにしたのは、映像というものに触れる体験をすごく変えてみたいと思ったから。鑑賞者が移動しながら、いろんな位置から見る――このインスタレーションに囲まれて、ある種の没入感ある状態で見ていただきたいなと。自由に動き回って、いろいろな視点、いろいろな角度から見ていただけるスペシャルな体験ができると思っています」(アイザック・ジュリアン)
「《Ten Thousand Waves》というタイトルが物語るように、見る者がたゆたう海の中へ流されていくように、巻き込まれていくように誘導されていく。作品の展示の仕方もそうですし、この作品群に鑑賞する人間が動かされていく……そういう感覚がすごく面白いなと思いました」(三宅さん)
“母体のようなぬくもり”――そんな記憶が蘇ってきそうな感覚も
「スクリーンごとに映像が時間差でパラパラと流れ出したり、あるときは同時に点灯したりして、ひとつにとどまらずに、いろんな場所へと自然に足が動いていました。視点も動かされることで、サーフィンの波待ちをして海の中で浮かんでいるような……そんな感覚もあって。でも突然、真っ暗闇になって視界を奪われたり。また音響が突然止まって、静寂に包まれたかと思えば、音が大きくなったり。寄せては返す波のように、人が動かされていく感覚がある。この空間もブルーで海のようだから、アイザックが作る映像という海の中に飲み込まれていくような。でもそれでいて何だろう、“母体のようなぬくもり”――そんな記憶が蘇ってきそうな感覚もある。それはとっても不思議な感覚で、何度も見たいと思わせられる作品でした。
この作品は実際にあった海の事故をモチーフにしているけれど、物語のなかにはアイザックがつくるフィクションも存在していて。50分の作品の中で、僕自身の心が大きく揺れ動く瞬間がたくさんありました。アート作品を鑑賞するとき、見る人それぞれの感じ方が違うと思うので、仲の良い友達と訪れて異なる感じ方を共有するのも面白いのではないかなと」
アートが生活の一部として、“そこにある”ということが好き
美術館に勤めていた祖父の影響を受けて、幼い頃から日常的にアートに触れていたという三宅さん。アートを愛する彼には、アートコレクターとしての一面もある。
「祖父が働いていた美術館は、祖父との待ち合わせ場所になっていたんです。祖父の仕事が終わるのを待っている間に、展示物を鑑賞したり。そんなこともあって、幼い頃からアートが身近にありました。
十数年前に五木田智央さんのモノクロームのポートレートの作品を見たとき、モノクロが織りなすメタリックな魅力に心惹かれて、一目惚れしたんです。『五木田さんの作品を家に迎え入れたい』と思ったのが、本格的にアートに興味を持つようになったきっかけ。それまでもシルクスクリーンなどのプリントの作品は購入したことがあったのですが、キャンバスの作品を自宅に置きたいと思ったのは初めてだったんです。
僕にとってアートは日常にあるもの。生活している中で、自然と自分の視線に入ってくることが、何かすごく好きで。改めて対峙して見るというよりは、生活の一部として“そこにある”ということが好きなんです」
映像の世界へ没入する、ビデオ・アートの新しい視覚体験
壁と一体化するようクライン・ブルーに彩られたベンチが、空間内に点在する。「ビデオ・アートの新しい見方を作りたかった」とアイザック・ジュリアンが語るように、スクリーンとスクリーンの間に設置された椅子に座って観ると、複数のイメージが目の前に広がり映像と音に囲まれて、一瞬にして作品の世界へと入り込んでしまう。立って観る、スクリーンの間を歩き回りながら観る、椅子に座って観る――様々な視点から作品を鑑賞することで、作品世界へより深く没入することができるのだ。
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3 weeks ago @Edit 3 weeks ago
作品やアーティストの背景を知ることは、とても大切だと思う
「アートは自分自身の創造性を高めてくれるもの。コンサートなどは自分で演出をするので、アートから着想を得ることもあったり。また逆もしかりで、アート作品から音楽を感じることもあります。作品やアーティストの背景を知るということは、とても大切だと思うんです。そのほうがより作品を楽しめるし、より作家を好きになれるから」
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