masaka says
小林文乃「カティンの森のヤニナ」を読んだ。カティンの森事件とその唯一の女性犠牲者となったヤニナ・レヴァンドフスカを象徴的なエピソードとして、東西の大国に挟まれたポーランドの苦悩の歴史を綴る一種のドキュメンタリー。「誰のためでもない。私は私のためだけに、この旅を続けるのだ」と書いているように、著者の思い入れが濃く反映された旅のエッセイでもある。それはそれで悪くないし、二次資料だけでお茶を濁すことなく何度もポーランドに足を運んでインタビューを重ね、また自身の幼少時のソ連体験も加味されて、内容も立体的。ただ、卒論のテーマでもあった事件とそこに登場する女性を描いた物語は読まねば、と思った期待とは違った。まぁそれは小説でも書かなければ成り立たないのだろうけれど