masaka says
西脇順三郎「Ambarvalia・旅人かへらず」を読んだ。じっくりと。アムバルワリアは《君は杏子の唇をもつたおれの牧場である/二つの青い千鳥が/君の眼の静かな水面をかき乱す/さうしておれはおれの披露した魂をその中で洗ふ》(恋歌)という具合だが、新倉俊一の解説によれば「いわゆる『意味』をもたない最初の詩集」であり「読者は『わからなく』ても安心して、好みに合うようにイメージを拾っていきさえすればいい」という。再読してようやく味わえる感じ。旅人~は《何者かの投げた/宝石が/絃琴にあたり/古の詩となる》(128)といった「古淡の詩情」の168篇で分かりやすい。左から右いっぱいまで振れる大きな落差