masaka says
斎藤幸平「マルクス解体」を読んだ。技術革新によって自然の制約を乗り越えて成長を続けながら資本主義による独占を取り戻すという〈プロメテウスの夢〉を見る西欧マルクス主義は地球環境激変の中で持続不可能なのは明らかで、そうではなくて晩年のマルクスのノートを精読することで人間と自然の関係を「方法論的二元論」で捉え直し「脱成長コミュニズム」の理念を浮かび上がらせる。ルカーチの読み直しを含む第一部はかなりヘビーだが、その「同一性と非同一性の同一性」をてこに生産力を論じる第二部は比較的読みやすく、脱成長を論じる第三部は良くも悪くもさっと読める。マルクスが最後に本当にそう考えていたかどうかはよく分からないにしても、成長を目指さずとも古来の「協同的富」の回復が「ラディカルな潤沢さ」につながるという希望を与えてくれる